精巣(睾丸)は陰嚢内に左右一対存在する重要な男性生殖器であり、精子の生成と男性ホルモンの分泌を担っています。成人の正常な精巣の長径は約2.5〜4.5cmで、表面は滑らかで弾力性があります。
生理学的には片側の健康な精巣があればホルモン分泌や生殖機能は概ね維持されますが、外傷、精巣捻転、停留精巣、精巣腫瘍などにより片側または両側の精巣を喪失した男性は少なくありません。精巣の欠損による陰嚢の左右非対称や萎縮は、男性のボディイメージや自己肯定感に少なからぬ心理的影響を与えます。
人工精巣インプラント
現代の改良型シリコン人工精巣は、高い生体適合性を誇るソフトソリッドシリコンエラストマーで作られています(図1)。液体やゲル充填型と異なり、ソリッド構造であるため破損や内容物の漏れのリスクが皆無であり、自然な弾力性と触感を実現しています。サイズも複数用意されており、健側の精巣サイズに合わせて最適なものが選択されます。

手術の目的と適応
陰嚢の外観を再建し、自然な左右対称性とふくらみを取り戻すことを目的とします(図2)。

- 精巣腫瘍、精巣捻転、破裂外傷等による精巣切除後。
- 高度な精巣萎縮。
- 停留精巣や先天性無精巣症。
麻酔方法と日帰り外来
従来の手術では下半身麻酔や全身麻酔が一般的ですが、当院では局所麻酔薬を適切な部位に注入する二重局所麻酔を採用しています。全身麻酔のリスクがなく、手術中も意識があり痛みを感じません。入院は不要で、手術終了後はそのまま歩行してご帰宅いただけます。
手術方法の手順
鼠径部または陰嚢上部に約2〜3cmの小切開を施し、顕微鏡下外科技術を応用して周囲の血管・神経を慎重に温存しながら陰嚢内に十分なポケットを作成します。適切なサイズの人工精巣を挿入・固定し、極細糸で層状に縫合して完了します。術中の止血には電気メスを用いず、微細糸による結紮止血を行うため、組織への熱損傷を防止します。
当院の手術の特徴
- 二重局所麻酔:全身麻酔・腰椎麻酔に伴う身体的負担や副作用を回避。
- 約2〜3cmの単一切開:目立たない位置で傷跡も最小限。
- 完全日帰り外来手術:入院不要で即日歩行帰宅。
- 無電気メス手術:熱損傷による組織障害や慢性痛を防止。
- 精密なマイクロサージャリー:インプラントの偏位や露出を最小化。
まとめ
人工精巣挿入術は、外観の対称性を回復し心理的自信を取り戻す上で非常に有効な手術です。生殖生理的機能の回復を目的とするものではありませんが、整容的・精神的な生活の質(QOL)向上に寄与します。手術前には経験豊富な泌尿器科専門医による丁寧な診察とカウンセリングをおすすめします。
執筆・監修:謝政興(Dr. Cheng-Hsing Hsieh)泌尿器科専門医