尿失禁は独立した疾患ではなく、様々な要因によって引き起こされる臨床症状です。加齢とともに有病率は増加しますが、決して老化の不可避な現象ではなく、すべての年齢層で発生し得ます。尿失禁は日常生活や外出への不安を招き、生活の質(QOL)に深刻な影響を与えます。臨床的には、腹圧性、切迫性、混合性、溢流性、機能性、反射性などに分類されます。頻尿、急な尿意(尿意切迫感)、繰り返す尿路感染症などの症状を伴うことが多く、適切な診断とアプローチが重要です。
骨盤底筋群の役割
骨盤底筋群は、尾骨から恥骨にかけて広がる筋肉のハンモックであり、膀胱、前立腺(男性)、直腸、子宮(女性)などの骨盤内臓器を下から支えています。加齢、出産、手術、生活習慣などにより骨盤底筋の筋力や神経コントロールが低下すると、尿道を締め付ける力が弱まり、尿失禁を引き起こす主原因となります。
ケーゲル体操(骨盤底筋運動)
排尿動作を途中で止める感覚で会陰部や肛門を意識的に引き締めるのがケーゲル体操です。骨盤底筋を強化する基本的なセルフケアですが、正しい筋肉を正確に意識して継続することが難しく、十分な効果が得られない場合もあります。
高密度焦点式電磁技術(HIFEM)磁気刺激チェア
高密度焦点式電磁技術(HIFEM: High-Intensity Focused Electromagnetic technology)は、電磁誘導の原理に基づき、深部組織へと透過するパルス磁場を発生させる先進医療技術です。最大2.5テスラの磁場強度が骨盤底の運動神経線維を脱分極させ、自発的な運動では到達できない「超極大筋収縮(Supramaximal Contractions)」を連続的に引き起こします。これにより、筋線維の肥大と増生が促され、排尿コントロール機能が強化されます(図1)。


UI CUBE磁気チェアの特徴
- 完全非侵襲・プローブ不要:体内への電極挿入や皮膚への電極パッド貼付が一切不要です。
- 着衣のまま施術可能:日常の服装のまま椅子に座るだけで、プライバシーを保ちながらリラックスして治療を受けられます。
- 短時間・高効率:1回あたり約20〜30分。週2〜3回のペースで、通常6〜10回を1クールとして実施します。
- 数万回のケーゲル運動に相当:1回のセッションで約1万回以上の効果的な骨盤底筋収縮を達成します。
- 深部神経へ均一に到達:電気刺激と異なり、皮膚抵抗による痛みや火傷のリスクがなく、深部組織までエネルギーが均一に届きます。
臨床エビデンスと治療成果
多くの臨床研究において、HIFEM治療を受けた尿失禁患者の約80〜95%でQOL(生活の質)の改善が認められ、パッド使用量の大幅な減少や使用中止が報告されています。3D超音波画像を用いた研究でも、骨盤底構造の動的安定性向上と尿漏れ頻度の有意な減少が確認されています。
まとめ
磁気刺激チェアによるHIFEM治療は、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁に対する安全で負担の少ない治療選択肢です。泌尿器科専門医による丁寧な診察と評価のもと、症状に応じた最適な治療計画を立案いたします。
参考文献
- Kimberly L. Evans KL, et al. Prospective Multi-Center Study on Long-term Effectiveness of HIFEM procedure for Treatment for Urinary Incontinence. Journal of Women’s Health Care. 2023;12(2):625.
- Braga A, et al. Efficacy of 3 Tesla Functional Magnetic Stimulation for the Treatment of Female Urinary Incontinence. J Clin Med. 2022;11(10):2805.
- Silantyeva E, et al. A Comparative Study on the Effects of HIFEM and Electrostimulation. Female Pelvic Med Reconstr Surg. 2021;27(4):269-273.