手術の原理
従来のネスビット法や白膜縫縮術(プリケーション)は、弯曲の外側(長い側)を縮めて真っ直ぐにする「白膜短縮術」であり、術後に陰茎長が若干短縮する傾向がありました。これに対し、白膜移植延長術(Tunical grafting and lengthening procedure)は、弯曲の内側(短い側)の白膜を切開して組織グラフトを移植し「短い側を延長」する術式です。術後の陰茎長の短縮を最小限に抑えられる点が大きな利点です。
麻酔方法
このような高度な陰茎再建手術は従来、全身麻酔や下半身麻酔下で行われてきました。
当院では独自開発の二重局所麻酔を採用しています。陰茎基部への麻酔注射のみで完全に無痛状態となり、意識は明瞭なまま全身麻酔のリスクを回避できます。手術中は音楽を聴きながらリラックスしてお過ごしいただけます。
手術創(傷跡)
亀頭直下の環状切開創1箇所のみ(必要に応じて陰茎基部に約3cmの小切開創)。傷跡は自然な皺に隠れ目立ちません。
入院の要否
入院は不要です。完全日帰り外来手術として行われ、術後はそのまま歩いてご帰宅いただけます。
手術方法の手順
弯曲角度が60度を超える重度例や、陰茎のくびれ・硬結(ペロニー病プラーク)を伴う場合に適応となります。二重局所麻酔下で冠状溝下から微小外科的に剥離を進め、神経血管束や尿道を慎重に温存しながら白膜を露出させます(図1 A, D)。短い側の白膜を横切開し、硬結プラークがあれば切開・一部切除を行います(図1 B, E)。生じた白膜欠損部に自家組織グラフト(陰茎深背静脈など)を極細糸で精密に縫合移植し(図1 C, F)、短い側を延長して陰茎を直線化します。静脈漏れ型EDがある場合は同時に静脈結紮術を実施可能です。

背側弯曲の場合、神経血管束を繊細に遊離し(図2 A)、局所から採取した陰茎深背静脈(図2 B)をグラフトとして移植します(図2 C)。電気メスは使用せず微小糸で結紮止血を行うため、熱損傷の心配がありません。

移植グラフト材料の選択
陰茎は人体で最も伸縮する臓器であり、勃起時の高内圧に耐えうる素材が必要です:
- 自家陰茎深背静脈グラフト:従来の大伏在静脈や口腔粘膜移植のように脚や口を別切開する必要がありません。当院では術野内の陰茎深背静脈を利用するため、身体の別部位に余分な傷跡を作らず、拒絶反応も皆無です。
- 人工素材:テフロン等は慢性炎症や感染リスクが高いため推奨されません。
- 加工生体組織:心膜や小腸粘膜下層(SIS)などの異種生体材料も状況に応じて選択されます。
当院の手術の特徴
- 二重局所麻酔:全身麻酔リスクを完全に排除した高安全性。
- 別部位切開なし:同一術野から深背静脈を採取、身体への負担を軽減。
- 日帰り外来手術:入院なしで当日歩行帰宅。
- 極細縫合糸:結節肉芽腫や長期疼痛を予防。
- 無電気メス手術:熱損傷を防ぎ、血流と神経機能を温存。
- 陰茎長の温存:短い側を伸ばすため、長さの喪失を防止。
まとめと専門医評価
白膜移植延長術は高度な技術を要する再建術式であり、弯曲が重度な方や術後の長さ短縮を避けたい方に最適な選択肢です。術前には経験豊富な泌尿器科専門医による丁寧な診察と適応判断が不可欠です。
執筆・監修:謝政興(Dr. Cheng-Hsing Hsieh)泌尿器科専門医